人材育成・コンサルティングのアイベックス・ネットワーク

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コラム

COLUMN

「研修に効果がない」と悩む経営層へ。行動変容を阻む原因と形骸化を解決する組織設計

「研修に効果がない」と悩む人事・経営層が直面するジレンマ

経営層や人事責任者の皆様にとって、人材育成は企業成長の要であり、未来への重要な投資です。しかし、多大な時間と予算を投じて研修を実施しているにもかかわらず、「研修に効果がない」「現場の行動が変わらない」と頭を抱えるケースは後を絶ちません。

受講直後はモチベーションが高まっていても、数日経てば元の業務スタイルに戻ってしまい、「良い話だった」という感想だけで終わってしまう。こうした状況が毎年続けば、研修の投資対効果(ROI)に疑問を抱くのは当然のことと言えます。

本記事では、2001年の設立以来、数多くの企業の組織開発を支援してきたアイベックス・ネットワーク(IBEX)の視点から、研修が形骸化してしまう根本的な原因を紐解きます。研修が現場で使えない理由や、行動変容につながらない背景には、個人のスキル不足ではなく「組織の構造的なズレ」が隠されています。「研修をやめるべきか、変えるべきか」とお悩みの方に向け、真の課題解決に繋がる組織再設計のアプローチを解説します。

なぜ「研修が現場で使えない」のか?行動変容につながらない3つの阻害要因

研修が「良い話だった」で終わり、現場の実践に結びつかない場合、受講者本人の意識や能力を責める前に、現場の環境に目を向ける必要があります。研修の定着を阻む主な要因は、以下の3つの「構造的なズレ」に集約されます。

阻害要因1:現場のKPIや評価指標と研修内容の矛盾

研修で学んだ内容が現場で使えない最大の理由は、研修で求められる理想像と、現場で課せられているKPI(重要業績評価指標)が矛盾していることにあります。

たとえば、マネジメント研修において「部下のキャリアを長期的な視点で育成し、心理的安全性のあるチームを作ること」の重要性を説いたとします。受講者はその理念に深く共感し、実践を誓って現場に戻ります。しかし、その受講者が評価される指標が「四半期ごとの短期的な売上目標の達成」のみに偏っていた場合、どうなるでしょうか。

日々の業務に追われる中で、中長期的な育成に時間を割くことは、短期的な目標達成のリスクとなり得ます。結果として、研修内容は「現場では使えない理想論」として片付けられてしまいます。これは受講者の意識が低いからではなく、組織が発している「メッセージ」が矛盾しているために起こる必然的な現象です。

阻害要因2:研修後 定着しない最大の理由となる上司のフォロー不足

研修内容が定着しない原因として見落とされがちなのが、受講者の直属の上司による関わり方です。研修は、受講者が知識を得ただけでは完結しません。学んだ知識を実務で試し、失敗と成功を繰り返しながら定着させていくプロセスが不可欠です。

しかし現実には、受講者が研修から戻った際、上司が「休んでいた分の仕事が溜まっているから、早く通常業務に戻ってくれ」と声をかけてしまうケースが散見されます。これでは、新しい取り組みに挑戦する余白は生まれません。行動変容は、周囲の環境、とりわけ上司の理解と支援がなければ実現しません。「研修に効果がない」と嘆く前に、受講者を受け入れる側の現場環境が、学習の定着を阻害していないかを確認することが重要です。

阻害要因3:「個人のスキル不足」と「組織構造の欠陥」の混同

多くの企業が陥りやすい罠として、「組織の問題をすべて個人のスキルや意識の問題に還元してしまう」ことが挙げられます。

特定の部署でコンプライアンス違反や業務ミスが頻発しているという課題があったとします。このとき、「社員のコンプライアンス意識が低い」「注意力が足りない」と結論づけ、意識改革のための研修を実施してしまうケースがあります。しかし、ミスの根本原因が「業務フローが複雑すぎる」「慢性的な人員不足で疲弊している」といった組織構造の欠陥にあった場合、いくら研修で意識を高めても問題は解決しません。

企業不祥事は個人のモラル低下だけでなく、組織の構造的な問題から引き起こされることが大半です。個人のスキル不足と組織構造の欠陥を混同し、後者を研修という手段で解決しようとすること自体が、「研修が行動変容につながらない」という結果を招いているのです。

「管理職研修は意味ない」という落とし穴と、研修の形骸化を招くメカニズム

特に投資対効果が問われやすいのが、管理職向けの研修です。「管理職研修は意味ない」という声が現場や経営陣から上がる背景には、組織運営上の深刻なエラーが隠されています。

権限と責任の不一致が研修での学びを無力化する

新任管理職研修などで「リーダーシップの発揮」や「自律的な組織運営」を学んだとしても、実際の現場において彼らに十分な決裁権や人事権が与えられていなければ、学んだ知識を発揮する場がありません。責任だけが重くのしかかり、何か新しい施策を打とうにも上層部の細かい承認が必要な環境では、管理職は次第に「言われたことをこなすだけのプレイヤー」へと後退してしまいます。

管理職が機能しない原因は彼らの能力不足ではなく、彼らがリーダーシップを発揮できる組織構造(権限移譲の仕組み)が整っていないことにあります。研修の形骸化を解決するには、この「構造」にメスを入れる必要があります。

毎年繰り返される「定例研修」が形骸化を解決できない理由

研修の形骸化を加速させているのが、「研修を実施すること」自体の目的化です。

「毎年4月には新入社員研修をやる」「昇格のタイミングで階層別研修をやる」といった定例のスケジュールが組まれている企業は多いでしょう。しかし、それが「例年通りに実施し、無事に終わらせること」が目的化してしまうと危険です。現場の課題は常に変化しているにもかかわらず、過去の踏襲で研修プログラムを回していると、現場のリアルな課題と研修内容との間に乖離が生まれます。「なぜ今、この層に、このテーマの研修が必要なのか」という課題起点の思考が欠落したまま実施される定例研修は、受講者にとっても単なる通過儀礼となり、現場で使えない知識の羅列に終わってしまいます。

「研修に効果がない」のであれば、研修をやめるべきか?

研修が機能しない理由が組織の構造にあるとすれば、私たちは研修という手段とどう向き合うべきでしょうか。

研修は万能薬ではなく、組織課題を解決するための「一手段」

「研修に効果がない」と感じたとき、意思決定者が持つべき最も重要な視点は、「そもそも研修という手段が適切なのか」を問い直すことです。

研修は、人材育成における有効な手段の一つですが、決して万能薬ではありません。組織の課題が「評価制度の矛盾」「業務フローの非効率」「マネジメント層の機能不全」に起因する場合は、研修よりも制度改定や組織再編、業務改善といった別のアプローチの方がはるかに高い効果をもたらします。

アイベックス・ネットワークの代表であり、『いらない課長、すごい課長』(発行部数3万部)や『働かない技術』(発行部数2.4万部)など累計発行部数10万部超の著書を持つ新井健一は、著書やコラムの中で一貫して「組織問題は人ではなく構造から生まれる」と提唱しています。経営の基礎を体系化し、俯瞰的な視点で組織を見渡すことで、研修以外の打ち手が見えてくるはずです。

課題解決のために「あえて研修を提案しない」という考え方

アイベックス・ネットワークでは、「研修ありきではなく、必要なら研修を提案しない」という姿勢を創業以来大切にしています。

お客様から研修のご相談を受けた際も、ヒアリングを通じて「課題の真因は研修では解決できない」と判断した場合は、率直にその旨をお伝えし、人事制度の改定や業務プロセスの見直しをご提案することがあります。

私たちは単なる研修会社ではなく、コンサルティング、人材育成、調査・診断、企画・製作支援など6つの事業を統合的に提供できるプロフェッショナルファームです。「良い話で終わる研修」を提供するのではなく、トップの意思を実現するためのシナリオを描き、真の課題解決に伴走すること。それが長期的なパートナーとしての信頼に繋がると確信しています。

研修の形骸化を解決し、真の成果を生み出すための組織再設計アプローチ

では、研修を確実に行動変容へとつなげ、成果を生み出すためにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか。

研修実施前に「そもそも何を解決したいのか」の解像度を上げる

研修を形骸化させないためには、事前の「課題の構造化」が不可欠です。「若手の主体性がない」「リーダーが育たない」といった表面的な現象にとらわれるのではなく、「なぜその現象が起きているのか」を深掘りします。

当事者意識や主体性は、意識改革ではなく組織設計から生まれます。真の課題を言語化し、「この課題を解決するためには、誰に、どのような知識やスキルを付与し、同時にどのような組織的支援を行う必要があるのか」という全体像を描くことではじめて、研修は有効な手段として機能し始めます。

人事制度と連動させ「組織からのメッセージ」を統一する

アイベックス・ネットワークは、「人事制度は単なる評価・処遇の仕組みではなく、組織からのメッセージである」と考えています。企業がどのような人材を求め、どのような行動を賞賛するのか。そのメッセージが最も色濃く反映されるのが評価制度です。

研修で伝える「あるべき姿」と、評価制度が示す「評価される行動」が一致していなければ、社員は必ず自身の処遇に直結する評価制度に従います。研修を再設計する際は、同時に評価制度や目標設定のあり方を見直し、経営からのメッセージに一貫性を持たせることが重要です。

実務課題と連動する学習プロセス(ワークショップセミナー)の導入

「現場で使えない」という批判を乗り越えるためには、研修の場を「座学で知識を詰め込む場」から「現場の実課題を解決する場」へと転換することが有効です。

アイベックス・ネットワークが提供する「ワークショップセミナー(WSS)」は、学習と実践を往復するプログラムです。開発設計や生産管理の革新といった実際の実務課題をテーマに設定し、その解決プロセスを通じて必要なスキルやマネジメント手法を学んでいきます。また、次世代リーダー養成においては、MBAコース(経営戦略・マーケティング・会計など)とアクションラーニングを組み合わせたハイブリッド型を採用し、経営全体を俯瞰する視座を鍛えます。特にVUCA時代においては、「情報収集力」「会計・ファイナンス力」「コンプライアンス意識」の3要素を連動させることが不可欠です。

心理的安全性と自己・他者理解を深める独自メソッドの活用

行動変容の基盤となるのは、チーム内の心理的安全性と円滑なコミュニケーションです。アイベックス・ネットワークでは、グローバル企業での導入実績も豊富な独自教材「SPトランプ®」を活用しています。

自己理解と他者理解を深めるツールとして、通算67回のファシリテーター養成講座や全国規模での活用事例研究会(通算18回)を開催し、現在ではAI連携やシニア領域などへも応用が拡大しています。こうした独自のフレームワークを研修に組み込むことで、より深いレベルでの意識変容と組織風土の改善を促します。

「研修に効果がない」を乗り越える、フルカスタマイズという選択肢

定例研修の形骸化を防ぐための具体的な手段として、「自社の実情に合わせたフルカスタマイズ」が挙げられます。パッケージ化された一般論の研修では、現場のリアルな課題との間に必ずズレが生じます。

IBEXでは、自動車、光学事務機器、重工業、エンジニアリング、広告代理店、製菓、学校法人など、業種や規模を問わず、各社の組織風土や経営課題に合わせた研修をゼロベースで企画・製作しています。
これまでにご支援した企業様からは、以下のようなお声をいただいております。

  • 富士ホールディングス 人財開発課長 斎藤邦明様:「ほぼフルカスタマイズでのご対応が弊社にとって最大のメリット」
  • 橘学苑 監事 柿本静志様:「組織の実情に合った指導・援助を丁寧に実施」
  • 石屋製菓 人事総務シニアエキスパート 矢島正志様:「新入社員から部課長、製造パートまでほぼ全階層の教育を担当」

自社の課題(構造)に徹底的に寄り添い、選抜&育成型のアセスメントなどを組み合わせたカスタマイズ設計こそが、「現場で使えない」という批判を跳ね返すための重要な要素となります。

人的資本経営の視点:研修効果をどう測定し、投資対効果を示すか

「研修に効果がない」という経営層の疑問に答えるためには、効果測定の仕組みづくりも欠かせません。経済産業省が推進する「人的資本経営」においても、人材投資のROIをどう可視化するかが問われています。

受講後のアンケートで「満足した」「勉強になった」という主観的な評価を集めるだけでは、行動変容の証明にはなりません。研修前の課題設定に基づき、「現場でどのような行動変化が起きたか」「それが組織のKPI向上にどう寄与したか」を定点観測する仕組みが必要です。アイベックス・ネットワークでは、人的資本経営に準拠した教育効果測定の体系化について4部にわたる連載で情報を発信するなど、研修と実践の往復を定量・定性の両面から検証するサポートを行っています。

まとめ:研修の効果を問い直す第一歩は「課題の構造化」から

「研修に効果がない」「形骸化している」という悩みは、決して御社だけの特別なものではありません。それは多くの場合、受講者個人の能力不足ではなく、研修と現場のKPIの矛盾、上司のフォロー不足、権限と責任の不一致といった「組織構造のズレ」から生じています。

研修は課題解決の強力なツールになり得ますが、それ単体で機能するものではありません。まずは「研修ありき」の思考から脱却し、自社が抱えている課題の根本原因はどこにあるのか、それを解決するためには研修と組織設計のどちら(あるいは両方)が必要なのかを冷静に見極めることが重要です。

アイベックス・ネットワークでは、コンサルティングから人材育成、制度設計までを統合的に支援し、経営トップの意思を現場の行動変容に繋げるシナリオライティングを得意としています。「研修を見直したいが、どこから手をつければいいかわからない」という場合は、ぜひ一度、根本的な課題の整理からご相談ください。

また、自社の組織課題を別の視点から見つめ直すヒントとして、弊社の提供する「AI思考実験」もぜひご活用ください。AIとの対話を通じて、組織の「構造的な問題」を浮き彫りにする新たな気付きが得られるはずです。

この記事を読んで 自社の場合はどうだろうと思われた方へ
AI思考実験で 現在の状況を整理できます。

AI思考実験 自社の状況を整理する(3~5分)

AI思考実験で整理した内容をもとに、
さらに人と話しながら検討したい場合はお気軽にご相談ください。

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