人材育成・コンサルティングのアイベックス・ネットワーク

人材育成・コンサルティングの株式会社アイベックス・ネットワーク

コラム

COLUMN

「管理職が機能しない」のは事業フェーズと組織のズレが原因?ミドルマネジメント形骸化を防ぐ再設計ステップ

はじめに:「管理職が機能しない」という悩みが事業変革期に急増する背景

近年、多くの企業の人事責任者や経営層から「管理職が機能しない」という切実な声をお聞きします。中堅・大企業において、業績目標の達成と部下の育成、さらにコンプライアンス対応や新規事業の模索など、ミドルマネジメントに求められる要求はかつてないほど高まっています。それにもかかわらず、現場では管理職が目の前の実務に追われ、本来のマネジメント業務がおろそかになっている状態が散見されます。

このような状況に対し、多くの企業は「管理職の能力不足」や「当事者意識の低さ」に原因を求め、管理職研修を実施することで事態を打開しようと試みます。しかし、研修を実施しても現場の行動が一時的にしか変わらず、数ヶ月後には元の状態に戻ってしまうケースが後を絶ちません。

なぜ、このような現象が繰り返されるのでしょうか。その真因は、個々の管理職の能力にあるのではなく、企業が直面している「事業フェーズの転換」と「既存の組織構造」の間に生じている大きなズレにあります。本記事では、事業変革期においてミドルマネジメントが形骸化するメカニズムを構造的に紐解き、安易な研修導入に頼る前に経営・人事が着手すべき「組織再設計」の実践的ステップを解説します。

事業フェーズの転換と「ミドルマネジメント 形骸化」の真因

企業が成長期から成熟期、あるいは変革期へと事業フェーズを移行させる際、組織に求められるマネジメントのあり方も根本的に変化します。しかし、多くの場合、評価制度や権限といった「組織の骨格」は過去の成功体験のまま据え置かれています。このギャップこそが、「管理職が機能しない」という事態を引き起こす最大の要因です。

「管理職 プレイヤー化 原因」は過去の成功体験を強要する組織構造にある

企業の成長期においては、高い実務能力を持つエース社員がそのまま管理職となり、自らの背中を見せて部下を引っ張る「プレイングマネージャー」のスタイルが非常に有効でした。業績が右肩上がりの環境下では、現場の最前線でプレイヤーとして成果を出し続けることが、マネジメントとしても高く評価されたのです。

しかし、市場環境が複雑化する変革期においては、一人の卓越したプレイングスキルだけでチーム全体の成果を牽引することは困難になります。「管理職 プレイヤー化 原因」を深掘りしていくと、管理職本人が好んで実務を抱え込んでいるというよりも、現在の組織構造が「プレイングで成果を出すこと」を暗黙のうちに強要している実態が浮かび上がってきます。リソースが不足する中で業績目標だけが据え置かれれば、責任感の強い管理職ほど自ら現場の穴埋めに走らざるを得ないのが現実です。

「管理職 判断できない 組織」を生み出す、成長期マネジメントモデルの限界

さらに、事業フェーズが変化しているにもかかわらず、意思決定のプロセスが過去のまま更新されていないことも大きな問題です。過去の延長線上にない新規事業や、前例のないトラブル対応が日常的に発生する時代において、現場の最前線にいる管理職には迅速な状況判断が求められます。

しかし、経営陣がすべての決定権を握り続ける中央集権的な体制が残っていると、管理職は「上にお伺いを立てるだけのメッセンジャー」と化してしまいます。失敗が許容されないカルチャーや、減点主義的な評価制度が残存している場合、管理職は自らリスクを取って決断することを避け、安全策に終始するようになります。結果として、現場からの提案は滞り、「管理職 判断できない 組織」という閉塞感が蔓延することになるのです。

「課長 部長 機能不全」を引き起こす3つの構造的レガシー(遺産)

事業フェーズと組織構造のズレは、具体的な日々の業務においてミドルマネジメントの動きを縛る足枷となります。ここでは、「課長 部長 機能不全」を直接的に引き起こしている3つの構造的なレガシー(過去の遺産)について詳しく見ていきましょう。

レガシー1:「管理職 役割 不明確」なまま進行する過重な業務の足し算

第一のレガシーは、マネジメントに求められる役割が時代とともに複雑化しているにもかかわらず、企業としての「期待役割」がアップデートされていないことです。

多くの企業では、従来の業績管理や実務遂行に加え、働き方改革への対応、1on1ミーティングの実施、コンプライアンスの徹底、メンタルヘルスケアなど、新たな業務が次々と管理職に上乗せされています。しかし、何か新しい役割を追加する一方で、既存の業務を減らす(引き算する)意思決定はほとんど行われません。「管理職 役割 不明確」な状態のまま、すべての期待に100%で応える「スーパーマン」であることを求めてしまっているのです。この無自覚な業務の足し算が、ミドルマネジメントを物理的にも精神的にも疲弊させ、機能不全へと追い込んでいます。

レガシー2:短期業績偏重の評価制度がもたらす「育成評価の不在」

第二のレガシーは、人事評価制度の矛盾です。人事制度は単なる給与決定のツールではなく、「企業が社員に何を期待しているか」を示す強力な組織からのメッセージです。

経営トップが口頭で「中長期的な視点で次世代リーダーを育成してほしい」と発信しても、期末の評価指標が「当期の部門売上目標の達成率」に極端に偏っていれば、管理職は当然のことながら短期的な業績を優先します。部下を丁寧に指導して数年後の成長を待つよりも、自らがプレイヤーとして動いて確実な数字を作る方が、組織から高く評価されるからです。この「業績評価」と「育成評価」のアンバランスという構造的なメッセージの歪みこそが、管理職のプレイヤー化を助長しています。

レガシー3:権限設定の未更新による「意思決定の遅れと萎縮」

第三のレガシーは、責任に見合った実質的な権限が委譲されていないことです。「ミドルマネジメント 形骸化」の現場を観察すると、課長や部長という肩書きと重い「責任」を与えられていながら、予算執行や人員配置に関する「権限」が著しく制限されているケースが目立ちます。

権限と責任のバランスが崩れている組織では、管理職は現場の問題に直面しても自らの裁量で解決策を講じることができません。さらに、昨今のコンプライアンスに対する防衛的な誤解(ルールを守ること=一切のリスクを取らないこと、という曲解)が加わることで、管理職の意思決定はさらに萎縮します。こうした権限の空洞化が、管理職の当事者意識を削ぎ落とし、機能不全を決定づけているのです。

研修ありきの解決策が「管理職が機能しない」現場で失敗する理由

ここまで見てきたように、管理職が機能しない真の原因は、事業環境の変化に取り残された組織構造そのものにあります。この前提を踏まえると、なぜ多くの企業で管理職研修が期待通りの効果を上げられないのかが見えてきます。

なぜ「とりあえず管理職研修」は現場の行動変容を起こさないのか

人事部門や経営層は、現場の課題を目の当たりにすると、解決への焦りから「まずは管理職研修を実施しよう」と結論づけがちです。しかし、どれほど素晴らしいマネジメント理論を学んだとしても、研修から職場に戻った管理職を待ち受けているのは「プレイングを強要する評価制度」や「権限のない過重な業務」という厳しい現実です。

現場の構造が変わらないまま個人の意識だけを変えようとするアプローチは、いわば「重い足枷をつけたまま速く走る方法を教える」ようなものです。「良い話を聞けた」という一時的な高揚感は得られても、翌日からの行動を変えることは物理的に不可能です。結果として、研修は「やりっ放し」となり、投資に対するリターンは得られません。

意識改革(人)ではなく、組織設計(構造)を見直す重要性

株式会社アイベックス・ネットワーク(IBEX)は、2001年の創業以来、人財育成と組織開発の専門ファームとして、多くの企業の課題解決をご支援してきました。その中で一貫して貫いているのが、「研修ありきではなく、必要であれば研修を提案しない」という姿勢です。

当事者意識やマネジメントへの意欲は、研修室での精神論から生まれるものではありません。期待される役割が明確であり、それを実行するための権限が与えられ、正しい評価がなされるという「合理的な組織設計」から自然と醸成されるものです。管理職を機能させるためには、まず経営と人事が一体となって、足枷となっている構造を取り除く作業から始める必要があります。

管理職が機能する組織へ:経営と人事が着手すべき3つの再設計ステップ

では、「管理職が機能しない」状態から脱却し、真に機能するミドルマネジメントを再構築するためには、どのような手順を踏むべきでしょうか。ここでは、研修を実施する前に必ず着手すべき3つの組織設計ステップを解説します。

ステップ1:変革期における「期待役割の言語化」と業務のアンバンドリング

最初のステップは、現在の事業フェーズに合わせて管理職に求める「期待役割」を徹底的に言語化し直すことです。これは、顧客と協働で課題を設定し、経営トップの意思から逆算して組織のあり方を描く「シナリオライティング」のプロセスでもあります。

漠然と「マネジメントを強化せよ」と指示するのではなく、「現在の課長には、プレイング業務を全体の何割に抑え、どの領域の意思決定を自律的に行ってほしいのか」を具体的に定義します。その上で、現在管理職が抱え込んでいる業務を棚卸しし、分解(アンバンドリング)することが不可欠です。部下に委譲できる業務、他部門に移管できる業務、あるいは廃止が可能な業務を切り分け、管理職が本来のマネジメントに注力できる「余白」を構造的に創出します。

ステップ2:人事制度という「組織からのメッセージ」のアップデート

次に、言語化した期待役割と、人事評価制度を合致させる作業を行います。前述の通り、人事制度は組織からの最も強力なメッセージです。

管理職に対して「中長期的な人材育成」や「新たな価値創造への挑戦」を期待するのであれば、それらが適切に評価されるよう指標を修正しなければなりません。短期的な業績達成率だけでなく、部下の成長度合いや、失敗を恐れずに新たな取り組みに挑戦したプロセスそのものを評価対象に組み込むことが重要です。評価制度というメッセージの矛盾を解消することで、初めて管理職は安心してマネジメント業務に舵を切ることができます。

ステップ3:経営視座(VUCA対応3要素)のインストールによる翻訳機能の回復

役割と評価の構造が整った上で、初めて「能力開発(育成)」が意味を持ちます。変革期において管理職が果たすべき最大の役割は、経営の戦略を現場の言葉に翻訳し、逆に現場の一次情報を経営に引き上げる「結節点」としての機能です。

この翻訳機能を回復させるために、IBEXでは次世代リーダー層に対して「VUCA対応の3要素」をインストールすることを提唱しています。

  • 情報収集力:社内の常識にとらわれず、顧客や市場からの一次情報を自ら獲得し、経営課題と結びつけて解釈する力。
  • 会計・ファイナンス力:自部門の部分最適ではなく、全社的な利益構造(PL・BS・CF)の視点から事業を俯瞰し、経営者と同じ言語で対話する力。
  • コンプライアンス意識:リスクを恐れて何もしない防衛的な姿勢ではなく、「目的達成のためにいかにルールを正しく活用するか」という攻めのコンプライアンス理解。

これらの経営視座を身につけることで、管理職は単なる業務の管理者から、事業の推進者へと脱皮することができます。

実課題を解決に導く「学習と実践の往復」とアセスメントの活用

構造を見直し、必要な視座を定義した後は、いかにして現場での行動変容を定着させるかが問われます。IBEXの次世代リーダー養成プログラムでは、MBAコースの理論(経営戦略やマーケティング、組織人事など)を学ぶインプットの場と、自社の実際の経営課題に対する解決策を立案するアクションラーニング(実践の場)を融合させたハイブリッドなアプローチを採用しています。

「学習と実践を往復」させることで、研修室で得た知識が現場で直面するリアルな障壁とぶつかり、実務で使える真のスキルへと昇華されます。また、役員や係長クラスを対象とした「選抜&育成型アセスメント」を活用し、個々の管理職が抱える思考の癖や組織的な課題を客観的に診断しながら、育成と一体化させた支援を行うことも効果的です。

「良い話で終わる研修」を脱却し、実課題の解決とスキルアップを同時達成する仕組みを構築することが、中長期的な組織力の底上げに繋がります。

まとめ:管理職の機能不全を組織アップデートの好機に転換する

「管理職が機能しない」「ミドルマネジメントが形骸化している」という現場の悲鳴は、決して管理職個人の責任ではありません。それは、企業の事業フェーズが次の段階へと進もうとしているにもかかわらず、組織構造が過去の成功体験にとどまっていることを知らせる、重要なサインです。

問題を「人」のせいにして安易な管理職研修に逃げ込むのではなく、経営と人事が覚悟を持って「構造」と向き合うことが不可欠です。期待役割の言語化、評価制度というメッセージのアップデート、そして実課題と連動した育成の仕組みを構築することで、管理職は必ず本来の機能を取り戻します。管理職の機能不全という課題を、組織全体をアップデートするための絶好の好機と捉えてみてはいかがでしょうか。

人事・組織開発に関する新たな視点や、複雑な組織課題の構造化についてさらに深く探求したい方は、ぜひIBEXの「AI思考実験」もご活用ください。次世代のマネジメントに向けた新しい切り口を見つける一助となるはずです。

この記事を読んで 自社の場合はどうだろうと思われた方へ
AI思考実験で 現在の状況を整理できます。

AI思考実験 自社の状況を整理する(3~5分)

AI思考実験で整理した内容をもとに、
さらに人と話しながら検討したい場合はお気軽にご相談ください。

セミナー情報

eラーニングシステム i-netschool