人材育成・コンサルティングのアイベックス・ネットワーク

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コラム

COLUMN

管理職が機能しない真の理由は「意思決定の基準」の欠如?経営視点と組織構造から紐解く処方箋

近年、多くの企業の人事・経営層から「管理職が機能しない」「期待通りにマネジメントを行ってくれない」という切実なご相談が寄せられます。かつては優秀なプレイヤーだった人物が、課長や部長に昇進した途端にマネジメントを放棄し、目の前の実務に追われるだけの存在になってしまう。こうした「ミドルマネジメントの形骸化」は、業種や規模を問わず、多くの企業が抱える共通の課題です。

本記事では、「管理職が機能しない」という事象の背後にある根本的な原因を紐解き、個人の能力や意識に責任を押し付けることなく、組織構造の観点から解決策を探ります。VUCA時代において、管理職が本来の役割を果たし、組織全体を牽引していくための実践的なアプローチと、人事・経営層が取り組むべき課題整理のステップを詳しく解説します。

「管理職が機能しない」という悩みの深層:なぜ課長・部長はプレイヤー化するのか?

管理職個人の「能力不足」に原因を求める危うさ

管理職が期待通りのパフォーマンスを発揮していないとき、私たちはつい「現在の管理職は能力が足りない」「当事者意識が欠如している」と、個人に責任を帰属させてしまいがちです。しかし、この見方は非常に危険です。

彼らもまた、厳しい評価や選抜を経てそのポジションに就いた優秀な人材のはずです。昇進した途端に突然能力が失われるわけではありません。問題の核心は、個人の資質やマインドセットにあるのではなく、彼らを取り巻く環境にあります。

株式会社アイベックス・ネットワーク(IBEX)では、「当事者意識は意識改革ではなく組織設計から生まれる」と提唱しています。「意識を変えろ」と精神論を説く研修を実施しても、現場に戻れば元の状態に戻ってしまうのはこのためです。まずは「人」を疑うのではなく、彼らが機能不全に陥らざるを得ない「組織構造」に目を向けることが、課題解決の第一歩となります。

「ミドルマネジメントの形骸化」は組織構造の必然である

では、管理職のプレイヤー化を引き起こす「組織構造」とは具体的に何を指すのでしょうか。それは、評価制度、業務設計、権限委譲の仕組みといった、企業内のルールの集合体です。

例えば、営業部門の課長を想像してみてください。彼らに課せられたミッションが「部門の売上目標達成」でありながら、同時に「自身の個人目標」も重く設定されている場合、どちらを優先するでしょうか。多くの場合、コントロールしやすく即効性のある「自身の個人目標(プレイング業務)」に時間を割くことになります。

これは管理職の怠慢ではなく、組織構造が「プレイヤーとして業績を上げろ」と強制している結果に過ぎません。中長期的な人材育成や組織風土の改善といったマネジメント業務が評価されない仕組みの中では、ミドルマネジメントの形骸化は起こるべくして起こる必然的な現象なのです。

管理職が「判断できない組織」を生み出す3つの構造的要因

1. リスク回避至上主義とコンプライアンスの誤解

管理職が判断できない組織を生み出す一つ目の原因は、誤ったコンプライアンス意識に基づく「リスク回避至上主義」の蔓延です。ハラスメント防止の法整備が進む中で、多くの企業がコンプライアンス研修に力を入れていますが、これが時として逆効果を生むことがあります。

「部下を厳しく指導するとパワハラで訴えられるのではないか」「自分の発言がコンプライアンス違反に問われるのではないか」という過度な恐れが、管理職の心理的安全性を奪っています。その結果、部下への適切なフィードバックを避け、摩擦を恐れて「自分でやってしまった方が早い」とプレイング業務に逃げ込んでしまうのです。

企業不祥事やハラスメント問題は、個人のモラルの欠如だけで起きるものではありません。リスクを恐れるあまり、対話や健全な衝突(コンフリクト)を避ける「組織の空気」が、管理職から意思決定の勇気を奪い、判断停止状態へと追い込んでいるのです。

2. 管理職の役割が不明確なままの「過重なプレイング業務」

二つ目の原因は、管理職の役割が不明確なまま放置され、過重な業務がアサインされている点にあります。「プレイングマネージャー」という言葉が一般化して久しいですが、その実態は単なる「業務の丸投げ」になっているケースが少なくありません。

「どこまでが現場の担当業務で、どこからがマネジメント業務なのか」という期待役割が言語化されていないため、管理職は目の前の緊急な実務に忙殺されます。部下の育成、業務プロセスの改善、他部門との調整といった本来注力すべきマネジメント業務は「重要だが緊急ではない」ため、常に後回しにされてしまいます。

役割定義が曖昧なまま、「とにかく数字を作れ、そして部下も育てろ」という無秩序な要求は、管理職を疲弊させ、プレイヤー化を促進する強力な要因となります。

3. 経営の全体像を俯瞰する「視座」の欠如

三つ目の原因は、管理職に対して「経営の全体像を俯瞰する視座」を養う機会が提供されていないことです。現場の第一線で実績を上げてきた人材が、そのままの視点でマネジメントを行おうとすると、必ず壁にぶつかります。

課長や部長に求められるのは、経営陣の意図を正しく解釈し、自部門の戦略に落とし込む高度な意思決定能力です。しかし、経営戦略、マーケティング、アカウンティングやファイナンスといった「経営の基礎言語」を持たないまま昇進してしまうと、経営と現場の橋渡しという重要な機能が果たせません。

結果として、上からの指示を右から左へ流すだけの「伝書鳩」となり、自ら判断を下すことができない機能不全に陥ります。視座を高めるための体系的な学習機会の欠如が、ミドルマネジメントの限界を規定してしまっているのです。

研修では解決しない?「管理職が機能しない」状態から抜け出すための組織設計

「良い話で終わる研修」の限界と構造的アプローチ

このような課長・部長の機能不全を解消するために、多くの企業が「とりあえず管理職研修を実施しよう」と考えます。外部から著名な講師を招き、最新のリーダーシップ論やマネジメント手法を学ばせることは一見有効に思えます。しかし、現場に戻れば元の木阿弥になってしまうという経験をお持ちの人事担当者は多いはずです。

IBEXでは、こうした「良い話を聞いて終わる研修」を批判的に捉えています。なぜなら、管理職の行動を規定しているのは、個人の知識量ではなく、彼らを取り巻く組織のルールや仕組みだからです。

「研修ありきではなく、必要なら研修を提案しない」という姿勢こそが、真の課題解決には不可欠です。行動変容を生み出すためには、単発の研修に頼るのではなく、研修と並行して「組織構造の矛盾」を解消するアプローチが求められます。

人事制度は「評価の仕組み」ではなく「組織からのメッセージ」である

構造的アプローチの中核となるのが、人事制度の再定義です。人事制度を「従業員を査定し、給与を決めるための仕組み」とだけ捉えていると、組織の本質的な課題は見えてきません。

人事制度とは、「会社はあなたにこのような行動を期待し、こうした成果を高く評価する」という「組織からのメッセージ」そのものです。もし、会社が管理職に「次世代リーダーの育成」を期待しているにもかかわらず、評価項目が「部門の短期的な売上達成率」に偏っているとすれば、そこには強烈な矛盾が存在します。

管理職が機能しないと嘆く前に、人事制度が発信しているメッセージが、経営の期待する行動と一致しているかを点検する必要があります。評価と報酬の仕組みがマネジメント行動を後押しする設計になって初めて、研修で学んだ知識が現場で実践される土壌が整うのです。

「課長・部長の機能不全」を解消し、次世代リーダーを育てる実践的アプローチ

VUCA対応に不可欠な3つの視座(情報収集・会計・コンプライアンス)

組織構造の整備と並行して進めるべきなのが、次世代リーダーにふさわしい視座の獲得です。先行きが不透明なVUCA時代において、管理職が的確な意思決定を下すためには、IBEXが提唱する「3つの視座」が不可欠となります。

  • 情報収集力: 社内外の微細な変化を捉え、経営環境の変化を先読みする力。現場の事象をマクロな視点と結びつけて解釈する能力が求められます。
  • 会計・ファイナンス力: 予算管理にとどまらず、事業の投資対効果(ROI)や資本コストを意識し、定量的な根拠に基づいて経営的な判断を下す力。
  • コンプライアンス意識: 単なる法令遵守やリスク回避ではなく、事業を推進する上での適切なリスクテイクと、組織を健全に保つためのガバナンスの視点。

これら3つの要素を総合的に鍛えることで、管理職は「現場の監督者」から「経営の代行者」へと進化を遂げることができます。

「学習と実践の往復」で実課題を解決する

これらの高度な視座を身につけるためには、座学による一方通行の知識伝達では不十分です。IBEXの次世代リーダー養成プログラムでは、MBA的な知識(経営戦略・組織人事など)を学ぶインプットと、自社の現実の課題に向き合う「アクションラーニング(AL)」をハイブリッドで提供しています。

例えば、ワークショップセミナー(WSS)を通じて、開発設計のプロセス改善や生産管理の革新といったリアルな経営課題をテーマに設定します。受講者は学んだフレームワークを活用しながら、実際の業務の中で解決策を立案し、実行に移します。

このように「学習と実践を往復する」プロセスを組み込むことで、管理職は自らの手で組織を動かす成功体験を積み、真の当事者意識を獲得していきます。知識を「知っている」状態から、現場で「使える」状態へと昇華させることが重要です。

人的資本経営時代における管理職育成のあり方と効果測定

「やりっ放し」を防ぐ、組織設計と連動した育成の仕組み

近年、経済産業省が推進する「人的資本経営」の考え方が浸透し、人材育成に対する投資対効果の開示が求められるようになりました。管理職育成においても、研修を実施してアンケートを取るだけの「やりっ放し」は許されなくなっています。

育成施策を意味あるものにするためには、人的資本経営に準拠した教育効果測定の体系化が必要です。研修直後の満足度だけでなく、「職場で行動が変化したか」「部門の業績や組織風土にどのような影響を与えたか」までを追跡する仕組みを構築しなければなりません。

この効果測定のプロセス自体が、組織設計と連動していることが重要です。評価制度や業務プロセスの改善とセットで育成施策を走らせることで、管理職の行動変容は一時的なものではなく、持続可能な組織の文化として定着していきます。

研修の前に人事・経営層が取り組むべき「課題の構造化」

質の高い育成施策を実現するために、最も重要なのは「研修を実施する前」のフェーズです。人事・経営層は、「管理職が機能しない」という漠然とした悩みを、具体的な組織課題として構造化するプロセスから逃げてはなりません。

  • 期待役割は明確に言語化され、本人に正しく伝わっているか
  • 評価制度という「組織からのメッセージ」に矛盾はないか
  • 過重なプレイング業務がマネジメントを阻害していないか

顧客と協働しながらこれらの課題を整理し、経営トップの意思を実現するためのシナリオを描き出すこと。これこそが、IBEXがコンサルティングから調査・診断、企画、研修までを統合的に支援するプロフェッショナルファームとして提供している真の価値です。課題の構造化なくして、効果的な育成はあり得ません。

まとめ:管理職の機能不全を組織全体のアップデートの契機に

本記事では、「管理職が機能しない」という問題の真因を、個人の能力不足ではなく「組織構造」の観点から紐解いてきました。プレイヤー化を強制する評価制度、リスク回避を助長する空気、そして経営視点を養う機会の欠如など、さまざまな構造的矛盾がミドルマネジメントの形骸化を引き起こしています。

管理職を本来の機能へと回復させるためには、「とりあえず研修を実施する」という短絡的な思考から脱却し、人事制度や業務設計を含めた組織全体の仕組みを見直すことが不可欠です。管理職の機能不全は、見方を変えれば、自社の組織構造を次なる成長ステージへとアップデートするための重要なシグナルでもあります。

組織課題の本質を見極め、次世代を担うリーダーをどう育成していくべきか。そのヒントを探求したい方は、ぜひIBEXのAI思考実験を通じて、自組織の現状と向き合ってみてはいかがでしょうか。

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