◇不祥事は「人」ではなく「組織」で起きる
企業不祥事が報道されると、ほぼ必ず同じ説明がなされる。
「担当者のコンプライアンス意識が低かった」
「倫理観に問題があった」
つまり、問題は個人のモラルにあると説明されることが多い。
しかし、少し冷静に考えてみたい。
もし本当に個人の倫理観が原因なのだとしたら、なぜ企業不祥事はこれほど繰り返されるのだろうか。
実際、多くの企業でコンプライアンス研修は行われている。
それにもかかわらず、不祥事は後を絶たない。
この事実は、一つのことを示している。
コンプライアンス問題の原因は、人の意識だけでは説明できない。
◇不祥事はどの会社でも起きる
コンプライアンス違反にはさまざまな形がある。
例えば
- 不正会計
- 個人情報の漏えい
- ハラスメント
- 労務違反
- 品質不正
などである。 (すすむ・はかどる、契約学習「契約ウォッチ」)
また企業不祥事の調査では、売上至上主義や組織内の圧力、上司の指示などが違反の背景になることが指摘されている。 (株式会社イー・コミュニケーションズ)
つまり、問題は単純な「悪い社員」の存在ではない。
組織の中で、不正が起きやすい条件が作られているのである。
◇不祥事の背景にある「組織の空気」
多くの企業不祥事の調査報告書では、原因として
- 上司に逆らえない風土
- 風通しの悪さ
- 現場と経営の乖離
などの企業風土が指摘されている。 (SMBCビジネスクラブ InfoLounge)
つまり、問題は個人ではなく
組織の空気
にある。
ここで重要な問いが生まれる。
その空気は、どこから生まれているのか。
◇人は「合理的に」行動している
コンプライアンス問題を理解するためには、
一つの重要な前提を理解する必要がある。
それは
人は合理的に行動する
ということだ。
例えば、会社がこう言ったとする。
「コンプライアンスを守れ」
しかし同時に
- 売上目標が極端に高い
- 期限が現実的でない
- 失敗すると評価が下がる
この状況では、何が起きるだろうか。
多くの人は
目標達成を優先する
ようになる。
なぜなら、それが組織の中で合理的だからである。
つまり、
不正は意図的な悪ではなく、組織の合理的な行動として生まれることがある。
◇コンプライアンス問題の構造
私たちは組織の問題を次の順序で理解している。
思想
↓
構造
↓
行動
↓
成果
つまり
- 経営の考え方
- 組織の設計
- 評価制度
が、社員の行動を決めている。
もし組織の構造が
- 売上だけを評価する
- 上司の指示が絶対
- 失敗が許されない
というものであれば、どれだけ研修を行っても
コンプライアンス問題はなくならない。
行動は
構造に従う
からである。
◇研修だけでは問題は解決しない
多くの企業では、コンプライアンス問題が起きると次の対策が行われる。
- 研修
- ルールの追加
- マニュアル
もちろん、それらは必要である。
しかし、本当の原因が
組織の構造
にある場合、それだけでは不十分である。
例えば
- 評価制度
- 権限の設計
- 情報共有の仕組み
これらが変わらなければ、行動は変わらない。
結果として、不祥事は繰り返される。
◇コンプライアンスを「組織問題」として考える
コンプライアンス問題を本当に防ぐためには、
視点を変える必要がある。
それは
コンプライアンスを教育問題としてではなく、組織問題として考えること
である。
つまり
- なぜ不正が起きるのか
- どの構造がそれを生んでいるのか
- どこに矛盾があるのか
を整理することである。
◇まず「構造」を考える
もしあなたの会社で
- 不正が起きるのではないか
- 現場が無理をしている
- 数字の圧力が強い
と感じているなら、まず次の問いを考えてみてほしい。
その問題は
本当に社員の意識の問題なのだろうか。
それとも
組織の構造が生んでいる問題なのだろうか。
この問いから、コンプライアンス問題の本当の解決が始まる。
(このテーマについて考えてみたい方は、
当サイトの AI思考実験 を試してみてほしい。)
IBEXの考え方:
コンプライアンス問題の多くは
「人の問題」ではなく
組織構造の問題である。
アイベックス・ネットワーク 代表 新井 健一