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コンプライアンス研修を空回りさせるもの 1/2


伝わらない開催目的

◇空回りするコンプライアンス教育

多くの会社がコンプライアンス研修に力を入れている。

そのこと自体は良いことなのだが、コンプライアンス研修に熱心な会社の中には、研修成果の実感が乏しく、ある種の虚しさを感じておられるのではないかと思えることも多い。

言い換えると、やっていることに空回り感を抱いているのである。

推測される原因は多岐にわたるが、ここでは二つに絞って考えてみる。

一つは研修の意義を正しく伝えきれていないこと。いま一つは的外れな研修企画(意図と整合しない研修)である。

今回は前者の原因とその対策について考えていくことにし、後者については次回に詳しく解説する。

◇重要な方針提示

かれこれ四半世紀にわたってコンプライアンスを中心としたリスクマネジメントに携わってきた筆者の経験から申し上げると、「ここでにリスクマネジメントは根付かないだろう」と感じてしまう会社が存在する。

その最大の原因は、「経営者がリスクマネジメントに本気で取り組もうとしていない」ということである。

社員は経営者が「何を語った(発言)」かにはさほど関心は持たないが、「何をしたか(行動)」には敏感に反応するといわれるように、行動で本気度を示すことは大切である。

しかし、その行動に先行すべき言葉(方針)が明確になっていない会社も多い。

コンプライアンス経営とその実現に向けた具体的なリスクマネジメントの取り組みが経営方針として打ち出されることで、社員は自分たちが向かうべき方向としてコンプライアンス経営を理解できるようになる。

それがコンプライアンス研修を受講する意味を正しく理解することにつながり、学習意欲と効果も増すはずである。

◇物差しの当て方

続いて行動面である。

いわゆるサラリーマンと呼ばれる人々は、常に何らかの物差し(評価基準)を当てられている。

だから「この行動は評価されるのか?」ということに敏感である。

高い業績(収益や利益)を実現した者は高く評価されて当然で、それは言われなくても理解できるため、たとえ評価方針が曖昧であっても、高い意欲を持って業績貢献に取り組んでくれる。

しかしリスクマネジメントへの貢献についてはそうはいかない。

「果たしてこの努力は報われるのだろうか?」と不安になり、彼らは上司の顔色を窺うであろう。

上司が本気になっていない課題に真剣に取り組んだところで評価などされないし、最悪の場合は「余計なことに時間を費やした」ということでマイナス評価になりかねないからである。

各ラインにおける人事評価は全社的な評価方針に基づくため、経営陣はこれらの貢献に対して正当な評価が与えられるような評価方針を出す必要がある。

これがリスクマネジメント貢献に向けた動機付けになり、貢献に必要なスキル習得のための研修への参画意欲と学習効果を高めることになる。

◇達成感と効力感

評価への反映に加え、リスクマネジメントに貢献してくれた社員が「自分の努力が会社や職場に良い影響を与えた」という実感を持てることも大切である。

たとえ貢献に対してそれなりの評価が与えられたとしても、「果たしてあの苦労に意味はあったのだろうか」と虚しさが残るようであれば、次も頑張ろうという動機にはつながらないであろうし、それに必要な研修受講への意欲や学習効果も低下するであろう。

経営陣への最後の期待は、リスク評価結果やリスク対策案などの成果を実務での活用を促進するということであり、それが貢献に対する真の評価であるともいえる。

このように「方針提示による方向付け」「貢献への正当な評価」そして「貢献内容の積極的な活用」という三つの要件が満たされることで、コンプライアンス研修の空回りは防げるはずである。

 

以上

 

アイベックス・ネットワーク パートナーコンサルタント 角渕渉

 

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