※当コラムは、企業人事に従事される方にはおなじみの「月刊 人事マネジメント」に寄稿させていただいた原稿を一部加工修正したものです。
◇研修カリキュラムを考える際の留意点
今回は、研修プランナーや講師と共に自社の研修カリキュラムを考える際の留意点をお伝えしたい。
まず、人材育成のプランニングは、育成の対象者、目的や狙い、期間、目指す成果などを考慮し、OJT、Off-JT、SD(Self-Development/自己啓発)のなかから、おおよそどの育成手法を選択するか、または手法を組み合わせるか、から始まる。そして、選択にあたっては、経営コンサルタントであるマイケル・ロンバルド氏およびロバート・アイチンガー氏が示した研究成果「7・2・1の法則」が参考になるだろう。
これは、ビジネスにおける人材の学びは、7割が仕事上の経験であり、2割が先輩や上司からの助言やフィードバックであり、残りの1割が研修などのトレーニングであるというものだ。そして、残りの1割を選択したとして、検討は次の段階に移る。
◇よい研修カリキュラムとは、どのようなものか?
研修カリキュラムは、研修の目的(知識やスキルの習得や活用に加え、人事交流などを目的にする場合も多い)や対象者、達成目標などに応じて、様々な形式を選択する。例えば、集合形式とオンライン形式、その併用、さらには集合形式を選択した場合に、机や椅子の配置に影響を与えるスクール形式やシアター形式、グループ形式(島型、ロの字、コの字、対面)などの選択だ。これらの選択はカリキュラムの前提となるものだが、コロナを経験して、それを乗り越えた今では、研修実施の前段でますます重要な選択となっている。
そして、そのような選択に基づき、カリキュラムは様々な技法により構成する。
カリキュラムを構成する技法
・講義
・映像視聴
・個人演習
・グループ演習
・全体発表
・総括
・体を動かすワーク
・ワールドカフェ
例えば、新任管理職研修で「環境分析」「役割認識」「リーダーシップとマネジメント」「コミュニケーション」などのテーマを扱うとしよう。それぞれのテーマを一塊のユニットとして、次のような技法の組み合わせをフローに当てはめるのだ。
「講義」⇒「個人演習」⇒「グループ演習」⇒「全体共有(全体発表/プレゼン)」⇒「総括」
◇講師の側からみた各技法のポイント
では、さまざまなご要望を受けて研修カリキュラムを立案する、講師からみた各技法のポイントをお伝えしたい。
・講義
まず「受講者は、講師の話を聴くよりも自分が話したい」ということを心得るべきである。多くの研修において、この原理原則を踏まえたカリキュラム構成のほうが、受講者満足度は高い。従って、 1 つのテーマにかかる講義は最大60分程度に抑え、60分を超過する場合は、なるべく休憩をはさむとよい。
その際、「受講者は、講師から問いかけられないと自分で考えない」という原理原則も押さえておきたい。例えば、講師が一方的に講義を進めると、受講者はその間ずっと受け身の姿勢で聴講することになる。だが、講師が「今の話について、感想を教えてください」「このキーワードをご存知だった方は?」などと一言質問することで、受講者は講義を主体的に捉えるようになるのだ。
また、話の上手・下手にも関わることだが、うまい講師は扱う「接続詞」の数が多いと聞いたことがある。確かに扱う接続詞の数によっても、話の単調さは解消されるだろう。ちなみに、接続詞の使いこなしは、訓練により熟達が可能である。
では次回も、講師の側からみた各技法のポイントを概観しつつ、よい研修カリキュラムとは何かを探求していきたい。