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内定者にはまずコンプライアンス研修を

※当コラムは、企業人事に従事される方にはおなじみの「月刊 人事マネジメント」に寄稿させていただいた原稿を一部加工修正したものです。

 

数多くの企業が内定者を対象とした研修を企画し実施してきた。

目的は、次のとおりである。

①不安や悩みを解消させる

②即戦力として活躍してもらうためにスキルを身に付けてもらう

③内定辞退を防止する

2024年度の場合、内定者研修の開催時期は半年前の10月1日が全体の60%を超えており、対面での開催が90%近い。

実施内容は各社それぞれに将来の人財像に基づき検討されるが、重要なコンテンツの1つがコンプライアンスだ。

 

◇ユニホームとスパイクシューズを提供する

学生から社会人への切り替えは重要であり、入社時に学生マインドが残ったままだと、どこに向かって、どうやってスタートを切るのかさえも分からないだろう。

まるでデニムとサンダルで100m走に挑もうとしているようなもので、輝かしいスタートダッシュは難しくなる。

会社が100m走を期待するなら、空気抵抗の低いユニホームと確実にコースを捉えるスパイクシューズの用意は当然であり、それがコンプライアンス研修だといえる。

トレーニング経験も実績もない対象者に、世界大会出場アスリート並みの装備は必要ない。

身の丈に合った最低限の用意があれば、それを使いこなしトレーニングを重ねて競技に出場し、さらに良い結果を出すための課題を自ら確認していける。

それを繰り返すことでさらに意識も高まり改善ポイントも明確になって、アップデートしながら記録を更新していくはずなのだ。

空気抵抗の低いユニホームを着れば風当たりをかわし前に進みやすい。確実にコースを捉えるスパイクを履けば、正しい道を外さない。その意味でコンプライアンス研修はとても重要なのだ。

 

◇「自身の価値を下げないこと」を伝える

私は、そんな未来を期待する大切な人財たちに「自身の価値を下げないこと」と言い続けてきた。

まだ学生である間に、今以上に価値を上げて欲しいとは決して言わない。価値を下げないだけでいいのだ。

会社が内定通知を出した段階ですでに価値ある人財であるからだ。

価値を下げてしまう誘惑は、日常生活にあふれている。自転車による交通違反、飲酒による不適切な言動、ながらスマホ、たばこのポイ捨て等々……。さらに最も注意したいのはSNSだ。

自身の投稿内容が不適切だったり、他者の投稿に対してコメントした内容が誹謗中傷になってしまったりすれば、個人、友人、家族、パートナーまで特定され、世界中から格好の標的にされてしまう。

このSNSの誤爆を不正のトライアングルにたとえるなら「機会」(絶対にバレないだろう、学生だから許される)、「動機」(共感を得たい、注目を集めたい、イイねがもっと欲しい)、「正当化」(だってみんなやってる、みんなの代わりにやってあげた)となるだろうか。

しかし、このような言い訳をしたところで名誉毀損罪、侮辱罪、脅迫罪は免かれない。さらに民事上の損害賠償を請求されるリスクも高まる。

浅い知識、低い意識による軽はずみな言動が重大な結果を引き起こすリスクを内定者たちに認識させることは、優秀な人財と見込んで内定を出した企業の責務の1 つと考える。

内定者研修で再認識する機会を作り、入社まで「自分の価値を下げない」過ごし方を見つめ直してもらい、そして研修の最後には彼らと約束する。

あっという間に半年後の新入社員研修を迎えて、「みなさん、約束を覚えていますか?」と声をかけると、大抵の新入社員は力強く返事をしてくれる。

さらに「価値を下げない努力をしてきましたか?」の問いに対して、自信をもって手を挙げてくれたのなら、もう新入社員として華麗にスタートダッシュの準備ができている。

 

アイベックス・ネットワーク パートナーコンサルタント 竹内 真司