※当コラムは、企業人事に従事される方にはおなじみの「月刊 人事マネジメント」に寄稿させていただいた原稿を一部加工修正したものです。
◇よい研修を設計するためのポイント
今回も、よい研修を設計するためのポイントについて紹介する。前回、例えば新任管理職研修であれば、「役割認識」や「リーダーシップとマネジメント」といったテーマ(構成要素、大項目)を一塊(ひとかたまり)のユニットとみなし、講義や個人演習といった技法の組み合わせで進めると述べた。
テーマ① 役割認識
講義⇒個人演習⇒グループ演習⇒全体共有⇒総括
テーマ② リーダーシップとマネジメント
講義⇒個人演習⇒グループ演習……
このような技法の組み合わせにはセオリーがあるので、研修担当者・責任者の皆さんには、ぜひ押さえていただきたい。(【講義】は前回ご参照)。
◇講師の側からみた各技法のポイント(続き)
今回も研修をお考えの企業さまからのご要望を受けて、講師が研修カリキュラムを考える際のポイントをお伝えしたい。
・個人演習
個人演習は、グループ演習につながる重要な技法である。いきなりグループ演習から入ると、受講者は自らの考えをまとめきれないまま、もしくは予備知識もなしに、討議に入らなければならなくなってしまうので順番は重要である。一方で、個人演習の後に講師が解説して終わる研修も、技法の組み合わせとしては不十分だ。個人演習の後に、グループで積極的に話し合ってもらう前提だからこそ緊張感を持たせることができる。個人演習の時間は、通常で5 分から10分程度、研修後に行動計画をまとめるような演習であっても20分が限度だろう。
・グループ演習
グループ演習は、人事交流を図る意味でも、受講者の研修満足度を高める意味でも有益な技法である(受講者は、講師の話を聴くよりも自分が話したい)。
グループの人数は、最多5 名が目安となるだろう。それ以上になると長机の組み合わせ上、討議に積極的に参加しづらく、結果としてフリーライダー(ただ乗り)が出てしまうリスクがある。ちなみに、オンライン研修において、ブレイクアウトルーム等を用いてグループ演習を行う場合は4 名でもよいと思う。また、討議時間は15分から20分が目安だ(オンライン研修の場合は入退出の時間を考慮して時間を設定する)。特に昨今は時間を短く区切ってテンポよく進めるほうが好まれるようだ。
なお、グループ演習の形式にもバリエーションがある。例えば、人事交流を強く押し出す場合は、ワールドカフェ形式やこれをアレンジした形式を用いることもある。また、研修の冒頭で「グランドルール」を提示することもある。グループ演習に入る前に各人の役割を決めてもらったり、グループをチームと見立てた際のあり方、目指すべき姿を定めたりしておくことは、受講者がリーダーシップ、またはメンバーシップを発揮する訓練にもなる。
・全体共有
グループ演習の討議内容は、必ず全体に共有したい。個人演習もグループ演習も、やりっぱなしでは、受講者は消化不良になる。受講者は自分たちが検討した内容を他のグループや講師に伝え、自分たちの討議の方向性が意図に沿っているのか、理に適っているのか、感想を求めたいと考えている。
・総括
最後に演習を実施する前と同様、演習の目的(なぜ実施したか)や意義(どんな気づきや実利が得られたか)を確認する。また、次のテーマに移行する際は、テーマ間にどのようなつながりがあるかを伝えるのも総括のタイミングである。